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直方鉄工協同組合80年史より〔発行:1981年(昭和56年)3月〕
1.工場懇話会の設立
「福岡県工場高山大観」
大正五年工場法が制定され、それが、明治三十三年設立の直方鉄工同業組合を、近代的な直方鉄工業組合へ脱皮させる一因となったことについてはさきに触れましたが、大正十二年頃から、工場法の趣旨を徹底させるための団体(工場懇話会)が各地に設立されはじめました。
工場懇話会は各警察署管内を単位としたものですが、その沿革について、昭和九年版の「福岡県工場鉱山大観」(福岡県鉱工連合会編)は、「大正十五年(五年の誤り)工場法ノ施行以来法規ノ円満ナル施行ヲ助長シ併セテ工場災害ノ予防、労働衛生、福利施設ノ改善ヲ促スノ目的ヲ以テ各地ニ工場懇話会、工場研究会等ノ諸団体ノ創設ヲ見ルニ至レリ。本県ニ於テモ之等ノ目的遂行ノタメ、大正十二年ヨリ之ガ設置ヲ奨励シ来レル結果、漸次此種団体ノ設立ヲ見」た、と述べています。
2.直方工業会
直方に於ける工場懇話会については、昭和七年刊行の「直方市制記念誌」に、「工場懇話会大正十四年(大正五年の誤り)一月工場法を発布され其法令の実行を徹底せしむべき機関として同年(大正十四年)四月組織し直方鉄工組合内に併置された。然るに会の事業の発展拡張に伴ひて昭和六年十月分離して殿町に事務所を設けた。現会員百三十余名、事業は各種講習会、会報発行、映画会、体育奨励運動其他である」
と、ありますが、更に詳しく調べてみると、昭和九年版「福岡県工場鉱山大観」では、直方の工場懇話会は「直方工業会」という名称で登録されており、会員数一五八、代表者は合資会社パーツ商会宮崎信臣、予算額三一三五(円)、事務所は直方市東平和町五〇四となっています。直方工業会の予算は県下の各工場懇話会の中でトップを占めており、二位の福岡工場懇話会の二五〇三(円)、三位の久留米工場懇話会の一五三三(円)と比べるとき、直方が如何に力を入れていたかが推察されます。
また、昭和十二年版の「福岡県工場鉱山大観」には、代表的工場懇話会として直方工業会が次のように紹介されています。
直方工業会
直方市大字下老良(直方市役所別館)
電話七七二番
直方工業会々則
第一条
本会ハ直方工業会ト称ス
第二条
本会ハ直方警察署管内ニ於ケル工場法ノ適用ヲ受クル工場主又ハ工場管理人並ニ工場取締規則ニ依ル工場ニシテ特ニ本会ノ趣旨ニ賛同シタル工場主ヲ以テ組織ス
第三条
本会ハ会員相互ノ親睦ヲ図リ工場並ニ職工ニ関スル諸般ノ事項ヲ討議研究シ其改善進歩ヲ図ルヲ目的トス
第四条
本会ハ前条ノ目的ヲ達成スル為左ノ事業ヲ行フ
一、
法規ノ研究普及徹底ニ関スル事項
一、
講演会講習会展覧会等ノ開催
一、
会報ノ発行
一、
工場又ハ職工ノ表彰
一、
労務者ノ体育並ニ修養ニ関スル事項
一、
産業能率ノ増進ニ関スル事項
一、
産業福祉ノ施設
一、
視察調査
一、
其他必要ト認ムル事項
(以下略)
役 員
会 長 佐田徳一
副会長 中里喜市
伊藤文治
理 事 花田勘平
3.直方工業会の行事
(表X)
月 日
行 事
場 所
摘 要
4/7
役員会
会事務所
9年度決算、10年度予算、出席12名
4/24
第11回総会開催
末廣家
年度予算、決算、出席会員103名
4/24
動力料納入奨励抽選会
末廣家
資格者75名
5/28
健康保険事務打合会
商工会議所
出席120名
6/1
日額算定基礎届助勢
管内全般
6/22
安全委員会
直方警察署
委員出席26名
6/26
安全週間打合会
直方警察署
法適工場主130名
6/26
安全問題講演会
市公会堂
講師、蒲生俊文氏、聴講者250名
6/26
災害予防映画会
市公会堂
観衆2000名
7/1
安全週間・神社参拝
多賀神社
神社参拝800名
7/2
内ヶ磯ハイキング
内ヶ磯
内ヶ磯200名
8/4
労務者軟式野球予選会
市営グランド
新入チーム優勝
8/6
8/10
工場事務管理講習会受講
山鹿小学校
理事・書記受講
8/25
軟式野球筑豊地方予選会
市営グランド
新入チーム優勝
8/28
見習工教育に関する協議会
会事務所
永島校長、会役員
9/29
軟式野球大会県大会参加
春日原球場
新入チーム応援
10/17
工場寄宿舎収容職工健康診断
公会堂
受診者350名
10/27
同 第2次診断
医師会館
受診者100名
12/7
岡部鉄工所視察
古賀
会長、理事長以下視察
12/15
第9回労務者表彰状伝達式
直方警察署
3/9〜
3/12
健康診断(保険課員現場診断)
市内各工場
受診者700名
3/18
役員会
会事務所
連合会従業員表彰内申出席者10名
4.福岡県鉱工違合会の結成
各地の工場懇話会は、大正十五年県下の鉱業団体をも包含した「福岡県鉱工連合会」を結成し、労務者表彰、安全問題講演会開催、体育指導、技術講習会開催、「福岡県工場鉱山大観」の発刊などの事業をおこないました。
なお、「直方市史下巻」の年表、大正五年の欄には、「九月、工場法施行に基づき、直方町にて京都・田川・嘉穂・遠賀四郡の工場主に対する同法講演会を開催」、また、八年の欄には、「十一月、直方鉄工業組合、労働時間一〇時間のところ、九時間制を実施」などの工場法関係の記述が見られます。
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